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新型コロナウイルス知っておきたい基礎知識と人権
新型コロナウイルス感染症は、誰もが感染する可能性があります。
私たち一人一人が、「人にうつさない」、「人からうつされない」、「自分が感染しているかもしれない」という意識を常に持つことが大事です。また、不確かな情報や事実とは異なる情報の拡散は、社会の不安を増大させ、偏見や差別を助長しかねません。正しい情報に基づいて、この感染症に向き合い行動することが、自身を守り、そして私たちの社会を守ることにつながります。さらに、療養を終えられた方が速やかに日常に戻られることが社会経済活動の回復の力になります。
誰もが安心して治療を受け、社会に戻ることができるよう、皆さんで支えあっていきましょう。
■基礎知識
(1)「新型コロナウイルス」とはどのようなウイルスですか
(2)新型コロナウイルス感染症にはどのように感染しますか
(3)新型コロナウイルス感染症の典型的な症状経過を教えてください
(4)PCR検査とは何ですか。また、どんなことがわかりますか。
(5)陽性と感染は同じですか。
(6)陽性と判定された場合はどうなりますか。
(7)濃厚接触者とはどのような人でしょうか。濃厚接触者となった場合は、どんなことに注意すればよいでしょう。
(8)家族に新型コロナウイルスの感染が疑われる場合に、家庭でどんなことに注意すればよいでしょうか。
(9)新型コロナウイルスに感染した人から、感染する可能性があるのはいつまでですか。
(10)新型コロナウイルス感染症で治療を受けた場合、治癒したと判断されるのはどういう場合ですか。また、新型コロナウイルス感染症に広く使える特効薬はまだないのに、どうして治癒するのでしょうか。
(11)どうなったら退院できますか。また、退院後・療養後はどういった生活を送ることになりますか。
■人権への配慮について
(1)新型コロナウイルス感染症に関する偏見や差別をなくしましょう
(2)新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!~負のスパイラルを断ち切るために~(日本赤十字社ホームページ 新しいウインドウで開きます)
基礎知識
(1)「新型コロナウイルス」とは、どのようなウイルスですか
「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」はコロナウイルスのひとつです。コロナウイルスには、一般の風邪の原因となるウイルスや、「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や2012年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」ウイルスが含まれます。
ウイルスにはいくつか種類があり、コロナウイルスは遺伝情報としてRNAをもつRNAウイルスの一種(一本鎖RNAウイルス)で、粒子の一番外側に「エンベロープ」という脂質からできた二重の膜を持っています。自分自身で増えることはできませんが、口や鼻の粘膜などの細胞に付着して入り込んで増えることができます。
ウイルスは粘膜に入り込むことはできますが、健康な皮膚には入り込むことができず表面に付着するだけと言われています。物の表面についたウイルスは時間がたてば壊れてしまいます。ただし、物の種類によっては24時間~72時間くらい感染する力をもつと言われています。
手洗いは、たとえ流水だけであったとしても、ウイルスを流すことができるため有効ですが、石けんを使った手洗いはコロナウイルスの膜を壊すことができるので、更に有効です。手洗いの際は、指先、指の間、手首、手のしわ等に汚れが残りやすいといわれていますので、これらの部位は特に念入りに洗うことが重要です。また、流水と石けんでの手洗いができない時は、手指消毒用アルコールも同様に脂肪の膜を壊すことによって感染力を失わせることができます。(厚生労働省HPより参考引用)
(2)新型コロナウイルス感染症はどのように感染しますか
新型コロナウイルスは飛沫感染と接触感染によりうつるといわれています。
飛沫感染 | 感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つばなど)と一緒にウイルスが放出され、他の方がそのウイルスを口や鼻などから吸い込んで感染します。 |
接触感染 | 感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手が回りの物に触れるとウイルスがつきます。他の方がそれを触るとウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触ると粘膜から感染します。 |
重症化すると肺炎となり、死亡例も確認されているので注意しましょう。特にご高齢の方や基礎疾患のある方は重症化しやすい可能性が考えられます。(厚生労働省チラシより引用)
(3)新型コロナウイルス感染症の典型的な症状経過を教えてください
ウイルス性の風邪の一種で、発熱やのどの痛み、咳が長引くこと(1週間前後)が多く、強いだるさ(倦怠感)を訴える方が多いことが特徴です。感染から発症までの潜伏期間は1日から12.5日(多くは5日から6日)といわれています。
約80%の方は、症状がないもしくは発熱・鼻水・のどの痛み・咳などの通常の風邪が少し長く続く軽症となり、発症から約1週間で自然に治癒します。
残りの約20%の方は、約1週間後から呼吸困難や咳・痰の症状を発症し、そのうち約5%の方は重症化するといわれています。(「新型コロナウイルス感染症診療の手引き第4版」より参照)
(4)PCR検査とは何ですか。また、どんなことがわかりますか。
現時点では、新型コロナウイルスの検出に最も信頼性の高い検査は、核酸検出検査です。一般的にPCR検査といわれています。
PCR検査(核酸検出検査)とは、新型コロナウイルスに特異的なRNA遺伝子配列を増幅し、これを検出する検査法で、検体中に遺伝子が存在しているか否かを定性的に確認する方法です。検査時間が長い(1~5時間)、専用の機器および熟練した人材が必要、高コストなどが短所として挙げられます。(「新型コロナウイルス感染症病原体検査の指針第2版」より引用)
■検査フロー
検査法による特性の違いを考慮して、適用する検査法を決めることが必要です。検体によっては擬陽性が生じる可能性がありますし、1回の検査結果が陰性の場合であっても感染を否定するものではありません。(「新型コロナウイルス感染症病原体検査の指針第2版」より引用)
(5)陽性と感染は同じですか。
陽性と感染は違います。陽性と判定されたものの症状が認められない(無症状である)方も、指定感染症の届出が必要な症例で、「無症状病原体保有者」と表現されます。
2020年2月1日から、診断した医師から保健所に対して、以下の症例定義により、指定感染症としての届出が実施されています。(「新型コロナウイルス感染症診療の手引き第4版」より参照)(SARS-CoV-2とは、国際ウイルス分類学会が名付けた、新型コロナウイルス感染症を引き起こすウイルス名です。)
※死因が新型コロナウイルス感染症でなくても、死亡の前後に新型コロナウイルスの陽性が確認された者は、新型コロナウイルス感染症の死亡者に含めて保健所に届け出されます。
(6)陽性と判定された場合はどうなりますか。
検査結果で陽性と判定された方は、診断した医師により直ちに最寄の保健所に届けられます。その届出に基づき、保健所が陽性と判定された方に対して感染症指定医療機関などへの入院勧告・措置等を行います。
陽性者の増加に伴い、重症者を優先する医療体制を整えるため、入院措置以外の宿泊療養・自宅療養の対応も行っています。(新型コロナウイルス感染症診療の手引き第4版」より参照)
1.65歳以上の者 | 入院勧告・措置 |
2.呼吸器疾患を有する者 | |
3.腎臓疾患,心臓疾患,血管疾患,糖尿病,高血圧症,肥満その他の事由により臓器等の機能が低下しているおそれがあると認められる者 | |
4.臓器の移植,免疫抑制剤,抗がん剤等の使用その他の事由により免疫の機能が低下しているおそれがあると認められる者 | |
5.妊婦 | |
6.現に新型コロナウイルス感染症の症状を呈する者であって,当該症状が重度または中等度である者 | |
7.上記1.〜2.までに掲げる者のほか,新型コロナウイルス感染症の症状等を総合的に勘案して医師が入院させる必要があると認める者 | |
8.上記1.〜2.までに掲げる者のほか,都道府県知事が新型コロナウイルス感染症のまん延を防止するため入院させる必要があると認める者 | |
9.原則として、1.から8.までに該当せず、医師が症状や病床の状況などを踏まえ、入院が必要な状態ではないと判断した者 | 宿泊療養・自宅療養 |
10.陽性と判定されたものの感染の症状が認められない者(無症状病原体保有者) |
※10.の方については、もし今後発症した際、発症の直前・直後でウイルス排出量が高くなり、周囲の方に新型コロナウイルスをうつす可能性がありますので、陽性と判定された時点で宿泊療養・自宅療養をお願いしています。
※福岡県と福岡県医師会は、新型コロナウイルス感染症の検査で陽性判定となった方に、宿泊療養をお願いしています。詳しくは、新型コロナウイルス感染症の検査を受けられた皆さまへ [PDFファイル/117KB]をご覧ください。
(7)濃厚接触者とはどのような人でしょうか。濃厚接触者となった場合は、どんなことに注意すればよいでしょう。
濃厚接触者は、PCR検査等で陽性と判定された方と近距離で接触、或いは長時間接触し、感染の可能性が相対的に高くなっている方を指します。
濃厚接触かどうかを判断する上で重要な要素は、「距離の近さ」と「時間の長さ」です。必要な感染予防策をせずに手で触れること、または対面で互いに手を伸ばしたら届く距離(1m程度以内)で15分以上接触があった場合に濃厚接触者と考えられます。
PCR検査等で陽性と判定された方と、ウイルスがうつる可能性がある期間(発症2日前から入院等をした日まで)に接触のあった方々について、関係性、接触の程度などについて、保健所が調査(積極的疫学調査)を行い、個別に濃厚接触者に該当するかどうか判断します。接触確認アプリを利用いただくと、陽性者と、1m以内、15分以上の接触の可能性がある場合に通知が行われ、速やかな検査や治療につながります。
なお、15分間、PCR検査等で陽性と判定された方と至近距離にいたとしても、マスクの有無、会話や歌唱など発声を伴う行動や対面での接触の有無など、「3密」の状況などにより、感染の可能性は大きく異なります。そのため、最終的に濃厚接触者にあたるかどうかは、このような具体的な状況をお伺いして判断します。
濃厚接触者と判断された場合は、保健所の指示に従ってください。濃厚接触者は、感染している可能性があることから、PCR検査等で陽性と判定された方と接触した最終日の翌日から14日間は、健康状態に注意を払い(健康観察)、不要不急の外出は控えてください。厚生労働省は、速やかに陽性者を把握する観点から、濃厚接触者についても原則検査を行う方針としています。(https://www.mhlw.go.jp/content/000635506.pdf)
なお、検査結果が陰性となった場合であっても、PCR検査等で陽性と判定された方と接触した最終日の翌日から14日間は不要不急の外出を控えるなど保健所の指示に従ってください。詳しくは、濃厚接触者と判断された際に、保健所から伝えられる内容を確認してください。(厚生労働省HPより参考引用)
(8)家族に新型コロナウイルスの感染が疑われる場合に、家庭でどんなことに注意すればよいでしょうか。
ご本人は外出を避けてください。ご家族、同居されている方も熱を測るなど、健康観察をし、不要不急の外出を避け、特に咳や発熱などの症状があるときには、職場などには行かないようにしてください。
ご家族に新型コロナウイルスの感染が疑われる場合には、同居されているご家族は「家族内でご注意すべきこと~8つのポイント~」を参考に対策してください。(8つのポイント [PDFファイル/954KB])(厚生労働省HPより引用)
【1.部屋を分けましょう】
- 個室にしましょう。(食事や寝るときも別室としてください。)
- 患者本人は、極力部屋から出ないようにしましょう。(トイレ、バスルーム等共有スペースの利用は最小限にしましょう。)
【2.陽性者のお世話はできるだけ限られた方で】
- 心臓、肺、腎臓に持病がある方、糖尿病の方、免疫の低下した方、妊婦の方などが陽性者のお世話をするのは避けてください。
【3.マスクをつけましょう】
- 使用したマスクは他の部屋に持ち出さないでください。
- マスクの表面には触れないようにしてください。(マスクを外す際には、ゴムやひもをつまんで外しましょう。)
- マスクを外した後は必ず石鹸で手を洗いましょう。(マスクがないときなどに咳やくしゃみをする際は、ティッシュ等で口と鼻を覆いましょう。)
【4.こまめに手を洗いましょう】
- こまめに石鹸で手を洗いましょう。
- アルコール消毒をしましょう。
【5.換気をしましょう】
- 定期的に換気してください。(共有スペースや他の部屋も窓を開け放しにするなど換気しましょう。)
【6.手で触れる共有部分を消毒しましょう】
- 共用部分(ドアの取っ手、ノブ、ベット柵など)は薄めた市販の家庭用塩素系漂白剤で拭いた後、水拭きしましょう。
- トイレや洗面所は、通常の家庭用洗剤ですすぎ、家庭用消毒剤でこまめに消毒しましょう。
- 洗浄前のものを共用しないようにしてください。
【7.汚れたリネン、衣服を洗濯しましょう】
- 体液で汚れた衣類、リネンを取り扱う際は、手袋とマスクをつけ、一般的な家庭用洗剤で洗濯し完全に乾かしてください。
【8.ゴミは密閉して捨てましょう】
- 鼻をかんだティッシュはすぐにビニール袋に入れ、室外に出すときは密閉して捨ててください。(捨てた後は、直ちに石鹸で手を洗いましょう。
(9)PCR検査で陽性を判定された人から、感染する可能性があるのはいつまでですか。
一般的に、肺炎などを起こすウイルス感染症の場合は、症状が最も強く現れる時期に、他者へウイルスを感染させる可能性も最も高くなると考えられています。
しかし、新型コロナウイルスでは、発症の2日前から発症後7~10日間程度他の人に感染させる可能性があるとされています。特に、発症の直前・直後でウイルス排出量が高くなるため、無症状病原体保有者(症状はないが検査が陽性だった者)からも、感染する可能性があります。
新型コロナウイルスに感染した方が、他の人に感染させる事例は、全体の2割以下と考えられますが、マスク無しの会話や3密(密閉・密集・密接)が感染拡大リスクとなっています。
体調が悪いときは不要・不急の外出を控えることや、人と接するときにはマスクを着用すること、普段会わない人とは会わないことなど、新型コロナウイルスに感染していた場合に多くの人に感染させることのないように行動することが大切です。
また、日頃から、身体的距離、外出の際のマスク着用、咳エチケット、石けんによる手洗い、アルコールによる手指消毒、換気といった一般的な感染症対策や、十分な睡眠をとる等の健康管理を心掛け、予防に取り組んでください。
※ マスクの着用により、感染者と接する人のウイルス吸入量が減少することがわかっています。(厚生労働省HPより参考引用)
(参考1)アメリカ疾病予防管理センター(CDC)ホームページ
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/about/transmission.html
(参考2)台湾における新型コロナウイルス感染症発症者の感染力の研究
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2765641?resultClick=1
(10)新型コロナウイルス感染症で治療を受けた場合、治癒したと判断されるのはどういう場合ですか。また、新型コロナウイルス感染症に広く使える特効薬はまだないのに、どうして治癒するのでしょうか。
発熱や咳等の呼吸器症状が消失し、鼻腔や気管などからウイルスを検出できなくなった状況を「治癒した」と判断しています。
また、この新型コロナウイルス感染症に対する抗ウイルス薬として、レムデシビルが承認されましたが、重症者を対象とした薬であり、副作用のリスクもあるため、広く使える特効薬とはいえません。現時点においては、ウイルスが上気道や肺で増えることで生じる発熱や咳などの症状を緩和する目的の対症療法が中心となっており、解熱剤や鎮咳薬の投与、点滴等が実施されています。対症療法により、全身状態をサポートし、本人の免疫力を高めることで、この間ウイルスに対する抗体が作られるようになり、ウイルスが排除されて治癒に至ると考えられます。(厚生労働省HPより参考引用)
(11)どうなったら退院できますか。また、退院後・療養後はどういった生活を送ることになりますか。
国内外の知見によると、発熱等の症状が出てから7日~10日程度経つと、新型コロナウイルス感染者の感染性は急激に低下し、PCRで検出される場合でも、感染性は極めて低いことがわかってきました。
そのため、以下の通り、入院や療養生活が始まってから、こうした期間が経過したかどうかと、各種検査の結果を総合判断して、元の生活への復帰が判断されることになります。なお、退院後の4週間は、毎日、体温測定を行うなどの自己健康管理といった対応をしていただきながら、社会生活を送っていただくことにご留意ください。(厚生労働省HPより参考引用)
<医療機関に入院した場合の退院基準>
症状がある方の場合
- 発熱等の症状が出現してから10日間が経過し、かつ、発熱などの症状が軽快してから、72時間が経過すれば、PCR等検査を経ずに退院が可能です。
- また、10日間が経過していない場合でも、症状が軽快して24時間後にPCR等検査を実施(1回目)し、陰性が確認されたら、1回目の検体採取後24時間後に再度PCR等検査を行い(2回目)、2回連続で陰性が確認された場合にも退院が可能です。なお、2.のPCR等検査で陽性が確認された場合は、再度PCR等検査を2回行います。
症状のない方(無症状病原体保有者)の場合
- 検査のための検体をとった日から10日間を経過すれば、PCR等検査を経ずに退院が可能です。
- 検査のための検体をとった日から6日間が経過し、PCR等検査を実施(1回目)し、陰性が確認されたら、1回目の検体採取後24時間後に再度PCR等検査を行い(2回目)、2回連続で陰性が確認された場合にも退院が可能です。なお、2.のPCR等検査で陽性が確認された場合は、再度PCR等検査を2回行います。
<自宅や宿泊施設での療養の場合の解除基準>
重症化のリスク要因(高齢者や基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患など))を有さない場合に、医師の判断により、宿泊施設での療養や自宅療養とされた場合も、医療機関に入院した場合と同様の基準で療養の終了が可能です。
人権への配慮について
(1)新型コロナウイルス感染症に関する偏見や差別をなくしましょう
新型コロナウイルス感染症には、誰もが感染する可能性があります。
不安な気持ちはみんな一緒です。私たちが向き合うべきはウイルスです。
詳細は、「新型コロナウイルス感染症に関する偏見や差別をなくしましょう」をご覧ください。