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労働相談 配転命令の拒否
質問
配転を受け入れないことはできるでしょうか。
答
使用者には労働者に対して労働の場所・種類・態様の変更を命じる労働指揮命令権があります。これは労働契約を根拠とし、労働契約に合意された内容・範囲に従い行使することができます。
労働者は、この合意の範囲内で命令に従う義務を負うこととなり、労働者の配転命令拒否が正当な理由を欠いていれば、懲戒処分の対象となります。配転とは配置転換を省略した言葉で、従業員の職務内容または勤務地が変更されることをいいますが、使用者は、以下のいずれにも該当する場合に労働者の個別的同意なく配転を命ずることができます。
ア 労働協約や就業規則に配転があり得る旨の定めが存在し、実際にも配転が行われていたこと
イ 労働契約に勤務場所や職種を限定する合意がなされていなかったこと
したがって、労働契約において勤務場所が限定されている場合には、住居の変更を伴うような勤務地の変更には労働者本人の同意が必要となります。
また、配転命令が労働契約の範囲内であっても、次のような配転命令は、権利濫用として無効になります。
ア 業務上の必要性がない場合
イ 不当な動機・目的が認められる場合
ウ 労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである場合
上記「ウ」については、業務上の必要性と労働者の受ける生活上の不利益とを比較考量し、配転命令が権利濫用にあたるかどうかが判断されることになります。
相談者の場合は、介護の必要な両親と同居されているとのことですが、過去の判例では、労働者自身が、病気の家族3人の面倒を自ら見ていた場合(日本電気事件 東京地判昭43.8.31)、病気の子供2人と近隣に住む体調不良の両親の面倒を妻と2人でみていた場合(北海道コカ・コーラボトリング事件 札幌地決平9.7.2)、不利益が著しく大きく転勤命令は権利濫用であるとされたものがあります。(「働くとき、雇うときのルール」の「労働条件の不利益変更」参照のこと)
なお、平成13年には、育児・介護休業等育児又は家族介護を行なう労働者の福祉に関する法律(以下 育児・介護休業法)において、子の養育または家族の介護状況に関する使用者の配慮義務が導入(第26条)されており、相談者が会社に対して、介護の必要な家庭事情を説明するなど、配転命令の再考を求めるのも有効であると考えられます。
不明な点は、最寄りの労働者支援事務所にお尋ねください。
法、根拠等説明
労働基準法 第15条(労働条件の明示)、第89条(就業規則の作成及び届出の義務)
労働契約法 第3条(労働契約の原則)、第15条(懲戒)、第16条(解雇)
育児・介護休業法 第26条(労働者の配置に関する配慮)
【平成25年8月当初掲載(平成28年3月、平成31年4月更新)】
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