特別対談 キャラクターデザイナー 谷口 亮さん × 福岡県知事 小川 洋

 福岡県では、スポーツの力で県民生活と地域をより元気にする「スポーツ立県福岡」の実現を目指し、年齢、性別、障がいの有無にかかわらず誰もがスポーツに参加できる環境の整備、選手の育成、大規模国際大会の誘致、スポーツの国際交流などに取り組んでいます。
 今年は、いよいよ東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されます。
 開幕に向けて気運が高まる中、小川知事は大会マスコットをデザインした谷口亮さんと対談し、マスコットに込めた思いや地元福岡県での創作活動、そしてそれぞれの立場から大会を盛り上げていくことについて語り合いました。

谷口 亮さん

キャラクターデザイナー
谷口 亮(たにぐち りょう)
昭和49年生まれ、福岡市出身。イラストレーターの父親の影響で、幼少期から絵を描き始める。かわいらしい二頭身のキャラクターに定評がある。東京2020オリンピック・パラリンピックの公式マスコットの生みの親として注目されている。

小川 洋

福岡県知事
小川 洋(おがわ ひろし)
昭和24年生まれ、福岡市出身。京都大学法学部卒業。昭和48年に通商産業省(現 経済産業省)に入省。産業技術環境局長、特許庁長官、内閣広報官を歴任。平成23年4月に福岡県知事就任。現在3期目。

大会マスコット「ミライトワ」「ソメイティ」

知事:大会マスコットに福岡県出身の谷口さんのデザインが選ばれたことが大変うれしく、喜んでいます。県民の皆さんも、大会をより身近なものに感じるきっかけになったと思います。
谷口亮さん(以下、谷口):ありがとうございます。喜んでいただき、また、地元福岡県のためになれたらうれしいです。
知事:谷口さんがこの道に進まれたきっかけは何ですか?
谷口:父がイラストレーターだったことが大きいです。子どもの頃、私の絵を褒めちぎる父親でした。絵の道へ進むと決めて以来、全く褒めてくれなくなりましたが、マスコットの決定は素直に喜んでくれました。
知事:同じ道の先輩として、親として、温かく導いてくださったんでしょうね。大会史上初めて、小学生の投票で選ばれたマスコット。このデザインはどうやって生まれたのですか?
谷口:大会エンブレムに使われている市松模様を取り入れた方が良いと、はじめから考えていました。そんな中、大濠公園を自転車で走っているときに、兜(かぶと)の部分を工夫すれば市松模様になるとひらめいたんです。それがミライトワの原型で、後はほんの少し手を加えただけでした。ソメイティの方は日本の自然の代表として桜をモチーフにしました。ミライトワは「伝統文化」、ソメイティは「自然」を、それぞれ「近未来」と掛け合わせたイメージです。

福岡県での創作活動

知事:谷口さんはずっと地元福岡県で活動しておられますが。
谷口:そうですね。何より自分が育った街で大好きですから。また、私の仕事はメールと電話があれば、どこにいてもできます。東京など県外に住むメリットを感じません。割と簡単に知り合いと誘い合って集まることができ、ウェブデザイナーやアニメーターなどさまざまな業種の人とも情報交換ができるのが良いですね。ただ、一つ言うなら、地元の企業に、もっともっと地元のデザイナーやクリエイターの発想を取り入れていただきたい。デザインなどの地産地消ができれば、地元で人材が育ち、私のように地元に住み続け、東京に出て行かなくて済みますから。
知事:県では、デザインを活用したものづくり、その販路拡大を支援するため、毎年「福岡デザインアワード」を開催し、優れた商品を表彰しています。皆さん、受賞を契機に、より市場に受け入れられる商品の開発と改良に頑張っています。例えば、ワインボトルを彩る「博多水引」のボトルリボンは、受賞後、受注増につながるなど高い評価を得ています。
谷口:商品とデザイン。とても良い取り組みですね。ぜひ、地域で頑張っているデザイナーに光を当てていただきたいです。
知事:受賞によって商品が注目されると、そのデザイナーの知名度も向上し、張りも出てきます。ここ福岡県から新たなヒット商品が一つでも多く生まれるように、これからも制度を充実させていきます。

(写真左)昨年の福岡デザインアワードのノミネート商品「狐火袢天(きつねびはんてん)」(宮田織物)を着ていただきました。
「スタイリッシュなデザインがいいですね」と谷口さん

大会をともに盛り上げていく

知事:大会開催まで約7カ月。主に東京で実施されますが、日本で開催される大会として、多くの国民が関わり、盛り上がるものにしていきたいと考えています。5月、本県でも聖火リレーが実施され、聖火ランナーが県内を走ります。多くの県民の皆さんに大会が近づいていることを実感していただきたいと思います。この他、さまざまな形で大会に参画する取り組みが行われており、例えば、選手村の交流施設「ビレッジプラザ」の柱や梁(はり)などに全国63自治体から木材が提供され、本県からは東峰村のスギ材が使用されます。
谷口:本当に楽しみですね。スポーツはもちろん、文化の面でも盛り上がればいいと思います。特に、伝統工芸品が大会公式ライセンス商品として販売されるので、海外に日本文化を発信する大きなチャンスです。久留米の籃胎漆器(らんたいしっき)もライセンス商品になっていますね。
知事:はい。このチャンスを生かしたいと思います。また、県では、事前キャンプの誘致にも力を入れてきました。現在、28の国・地域が県内で事前キャンプを行う予定であり、開催地東京都に次ぐ全国2番目の多さです。既に誘致国との交流が始まっている市町もあります。選手や関係者に八女茶を振る舞うなど県産品のPRも行っています。今年は、久留米に、あのリオオリンピックでメダル13個を獲得したケニアの陸上チームもやってきます。
谷口:全国2番目とはすごい。事前キャンプで世界のトップアスリートの姿に直接触れることで、元気と感動を、特に子どもたちは夢や希望をもらえると思います。また、交流を通じて県のさまざまな魅力も大いに海外に発信していけたらいいですね。
知事:昨年のラグビーワールドカップ、日本代表の活躍により、代表チームと日本中が「ONE TEAM」になりました。本県ゆかりの4選手、福岡選手、流選手、トゥポウ選手、ムーア選手もチームの勝利に大きく貢献しました。試合会場となった博多の森球技場はもとより、福岡県内に欧米を中心とした外国人の方々に数多くお越しいただけたのは、本当に良かった。今年のオリンピック・パラリンピックでも、海外から多くの方々に来ていただきたいと思います。そして、女子柔道の素根輝(そねあきら)選手、女子マラソン視覚障がいクラスの道下美里(みちしたみさと)選手をはじめ本県ゆかりの選手の活躍を県民の皆さんとともに力強く応援していきたいと思います。谷口さんも一緒に大会を盛り上げていきましょう。
谷口:私もマスコットの生みの親として、日本全体で盛り上がるよう協力していきたいと思います。
知事:最後に、新年ですから子どもたちに向けてメッセージをお願いします。
谷口:続けることが力になる、そして、チャンスがあればチャレンジすることが大事です。今回のマスコットもそうでしたが、目に付いた公募にはいつも作品を出してきました。「まかぬ種は生えぬ」です。
知事:継続、そしてチャレンジが、今回のマスコット決定につながったんですね。谷口さんの今後ますますのご活躍を大いに期待しています。

集合写真