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2019 夏号 SUMMER 通巻595号 令和元年6月20日発行(季刊)
発行 / 福岡県 県民情報広報課

 
 
 

福岡から糸島の道中のスナップ写真1

フクオカの新しい魅力を見つける CYCLE FUKUOKA

里山に和み、海に癒やされる
福岡から糸島の70キロメートル

Photo by Atsushi Tanno

福岡から糸島の道中のスナップ写真2
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山の糸島へ

 「僕らが土地へお邪魔するんだ。謙虚じゃないと、人も自然も素顔を見せてはくれない」。サイクリストたちはそう話す。

 夏が似合う糸島の素顔を知りたくて西区の端から自転車を走らせる。「海沿いはかっこよすぎる。本当は武骨で、男前な場所なんじゃないか」。今日はそんな素顔を見せてくれるだろうか。

 長垂(ながたれ)海岸から走り出して川原川(かわばるがわ)沿いへ。里山の風景には、のどかな鳥の声とそよぐ風。収穫前の小麦と緑濃い山々の対比が美しい。脇道に入ると現れたのはポッコリとした緑の森。まるで田畑に浮かぶ島のような、それはなんと古墳。また走り出して出会った次なる森には社(やしろ)が潜む。鎮守の森は神様との距離が近い、自然を崇敬する思いがそこにあるのだ。

 風に乗って遠くから聞こえる耕運機の音が、竹林を抜ける坂では息遣いに消されていく。「山の糸島もいいだろ」。汗と風が、そう呟くようだ。糸島の南端から民家を縫う坂道を抜けて、二丈(にじょう)に向かう県道へ。途中のハウスで電照菊が盆に向けて作られていることを知った。「照明で成長を合わせるんよ」。何げない会話で暮らしと糸島がグッと近くなる。続いて現れた木陰のすぐ横に涼しげな湿地が! 糸島は水も豊かだと、またも知らなかった表情に触れる喜び。自転車だからいつでも立ち止まれる。その素顔を知るたびに、土地になじんでいくようだ。田園を抜け、JR筑肥線を渡れば海に面した半島部へ。もっと深く糸島の懐を知りたい。

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走った分の感動

 空は快晴。野北の海は目前。でもあえて海岸に出ない道を選ぶ。見晴らす山の上から海の景色を求め、一気に高さを増す坂道へ。小さなカーブをいくつ数えたか、パッと視界が開けると真っ青な海が現れる。トビと目線を同じにする標高150メートルほど、名前のない海沿いのカーブでは、空と海、鮮やかな二つのブルーに出会う。あまりに爽快! このために坂を登ったのだ。

 ひとたび、坂を下り櫻井(さくらい)神社へ。続く丘の上から二見ヶ浦(ふたみがうら)を望む場所まで、再び汗をかく。さらに展望所そばでは野ウサギが、すごい速さで前を跳ねていく姿に遭遇。こんな景色、同じ時間は二度と来ない。この瞬間だけの感動がサイクリストを育てるに違いない。

 今津(いまづ)海岸では穴場の松林を抜け、砂浜で足を休めた。潮風が体を冷やし、目の前に広がる海の開放感で癒やされる。終着の長垂海岸まで約70キロメートルのライド。福岡から糸島を巡り、さらけ出された素顔が素晴らしく、きっとまた自転車を走らせるだろう。

 さあ、次はどんなフクオカの素顔に会えるだろうか。

 

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