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2019 秋号 AUTUMN 通巻596号 令和元年9月20日発行(季刊)
発行 / 福岡県 県民情報広報課

 
 
 

直方〜小石原〜英彦山を巡る道中のスナップ写真1

川の流れをたどって
修験の山へ

直方〜小石原〜英彦山を
巡る100キロメートル

Photo by Atsushi Tanno

 
フクオカの新しい魅力を見つける CYCLE FUKUOKA
直方〜小石原〜英彦山を巡る道中のスナップ写真2
 

遠賀川の源流へ

 「いろいろな福岡を知れてうれしいの」。結婚を機に大阪から移住してきたばかりの彼女は、どこへ行くのも楽しそう。「週末は必ず、どこかへ行こうって。引っ張り出される僕も大変」。けれど、彼女とのライドはいつも新鮮だ。おもてなしのような名所コースも考えるが、福岡は美しい海や山もすぐ近く。「大阪だときれいな海には県を越えないと行けないから」と、自然豊かな福岡の風土はすでに合格点らしい。そんな彼女と目指したのは英彦山神宮(ひこさんじんぐう)。遠賀川河川敷のサイクリングロードから、クライマックスは修験道の歴史を刻む厳かな山へ。途中、小石原のまちにも立ち寄る約100キロメートルを走ってみた。

 朝から澄み渡る青空と穏やかな流れを見せる遠賀川。絶好のライド日和に恵まれて直方から飯塚、嘉麻と少しずつ上流へ。田畑を潤す川沿いに現れたのはアカミミガメだ。のどかな甲羅干しを邪魔してごめん。林道では美しい竹林に包まれながら、国道211号へ。トンネルを抜け、遠賀川源流公園で休息を取る。「あの大きな川がここから…」。馬見山(うまみやま)の山腹は涼しく、風が抜ける木陰が心地よい。源流の冷たい水を浴びたら、小石原での昼食まであと一息だ。

直方〜小石原〜英彦山を巡る道中のスナップ写真3直方〜小石原〜英彦山を巡る道中のスナップ写真4

 
直方〜小石原〜英彦山を巡る道中のスナップ写真5直方〜小石原〜英彦山を巡る道中のスナップ写真6

修験の山へヒルクライム

 「小石原焼って、いいね」。食事の器を手にして喜ぶ彼女を、秋の民陶むら祭に案内したいと思った。小石原焼発祥の地として350年の歴史を持つ皿山は、窯元が軒を連ねる風情がいい。行者杉(ぎょうじゃすぎ)を抜けると国道500号の長いダウンヒル。彦山川(ひこさんがわ)まで爽快に下れば、いよいよ英彦山(ひこさん)へのヒルクライムだ。厳しい登りは途中の沢で一休み。渓流に足をつけるとミヤマカワトンボがひらりと袖をかすめていく。さらに登った曲がり角に「99カーブ」の標識。数字が小さくなると目的地が近づくことを教えてくれる。銅鳥居(かねのとりい)に立ち寄り、石段の先を見据えたら最後のチャレンジ。険しい登りに苦悶(くもん)しながら、英彦山神宮に到着すれば2人とも笑顔に。朱色(しゅいろ)の奉幣殿(ほうへいでん)が厳かな姿を見せていた。

 奉幣殿で静かに手を合わせたら、心新たに帰路をスタート。添田駅までのダウンヒルを一気に楽しんだら、川崎町を経由して再び遠賀川に沿いながら飯塚駅へ。一日かけて巡った筑豊の地は、豊かな水と緑が鮮やかだと再発見。「秋にもう一度、紅葉と窯元を見に来ようね」。2人のライドにまた一つ、楽しみな予定が加わった。