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2017 冬号 WINTER 通巻589号 平成29年12月20日発行(季刊)
発行 / 福岡県 県民情報広報課

 
 
 
ふくおかに発見!魅力あるものづくり中小企業

福岡県内企業の約99.8%を占める中小企業。
雇用の約8割を担い、県の経済発展と活力の原動力となっています。
本県では技術、開発、人材など、あらゆる方面で、
「ものづくり力」を発揮する県内の中小企業を応援します。

 福岡県の中小企業の中には、高い技術力を生かした製品開発に取り組む企業や、多様な人材の活躍により成果を上げている企業など、優れた「ものづくり企業」がたくさんあります。
 県では、こうした県内のものづくり中小企業の新たな取り組みを促進し、ものづくりの魅力を伝えるための冊子『福岡県ものづくりモノ語り100』を作成しました。今回は、その中から2社をピックアップしてご紹介します。 

QRコード

『福岡県ものづくりモノ語り100』は、福岡県ものづくり中小企業推進会議ホームページ
https://monodukuri-fukuoka.jp/monogatari100/)でご覧いただけます。

中小企業技術振興課 金川 典史さん

「今後も新たな製品開発や販路開拓など、積極的にチャレンジする中小企業をバックアップしていきたい」と話す、中小企業技術振興課 金川 典史(かながわのりふみ)さん

県担当者に聞きました!

技術とアイデアで勝負、中小企業の底力に注目

 経済のグローバル化や企業間競争の激化など、ものづくり中小企業を取り巻く環境は大変厳しくなっています。そんな中、世界トップシェアの製品やオンリーワンの製品を有する企業など、福岡県には誇るべき中小企業がたくさんあります。こうした企業を知っていただき、ものづくりに関心を持っていただくきっかけになればと思い、この冊子を制作しました。各社のものづくりに対する思いや取り組みなどをまとめた、読み応えのある冊子です。企業の方々にとっては、経営や企画のヒントが見つかるかもしれません。「ものづくりに興味がある」「地元で就職したい」と考えている若い世代の人にもぜひ読んでもらいたいと思っています。

 
 
技術力

1/強い火力によりガラスの切断や底面作りを行う。工場内の機械も現場でアイデアを出し合い改良を重ねたオリジナルのもの
2/工程の一つ一つにスタッフの手作業が加えられ、より精密な製品が作られている

 
株式会社クライミング 高い技術力で日本の科学や教育を支える
 
代表取締役社長 濱地 信さん

「設計から製造、仕上がりまでトータルで受注できるのは当社の最大の強みです」と代表取締役社長 濱地 信(はまちしん)さん

 学校などで誰もが一度は目にしたことがある、メスシリンダーなどのガラス製体積計。

 これらの特殊ガラス製品を創業以来、約80年にわたって製造し続けているのが、株式会社クライミングです。今では国内でのシェアが6割と、生産量としては日本一を誇ります。

 現在は、県内3カ所に工場を設置し、特殊ガラス製品の製造を行っています。体積計は正確さが求められるため、量産することが難しい製品でもあります。

 「ガラス加工技能士」(国家技能検定)の資格を持つ職人による熟練の「手加工技術」と、その技術を基に工場で量産する「機械加工」が融合した体制こそが、クライミングの大きな強みです。

 この2つの体制を兼ね備えた企業は、国内でもクライミングを含めた数社しかありません。

 大学や企業の研究施設などからオーダーされる、特殊形状の一点ものにも対応するなど、その技術力は高い評価を得ています。

 「これからも当社の特殊技術を用いた、ガラスでなければ作ることができない新たな製品づくりにチャレンジしていきたいですね」と代表の濱地さんは語ります。

 
企画力

3/さまざまなしまの間隔やグラデーションで表現された「小倉 縞縞」の美しい模様 4/インテリアなど多目的に使用できる140センチメートルの広幅
5/風呂敷や小物など、オリジナルデザインの商品の数々

 
有限会社小倉クリエーション 小倉織を復元・再生し新しいデザインで発信
 
代表取締役社長 渡部 英子さん

「小倉織の伝統と技術、デザインを守るためにも、自分たちの力で発信していくことが一番だと感じた」と代表取締役社長 渡部 英子さん

 絶妙なグラデーションの色合いが美しい小倉織のしま模様。

 小倉織は、江戸時代に武士のはかまや羽織に用いられたという伝統ある綿織物ですが、時代の流れとともに戦時下で途絶えてしまいました。

 そんな小倉織を復元・再生させたのが、有限会社小倉クリエーション代表の渡部英子(わたなべひでこ)さんの姉でもある染織家・築城則子(ついきのりこ)さんです。

 小さな古布に込められた織りの技術と美しさに魅せられ、手織りに加え現代の機械織りの技術とデザインでの復元を試みたそうです。

 小倉織の特長はなめし革のようにしなやかで、何より強度に優れていること。その理由はたて糸の多さにあります。

 他の織物の倍以上のたて糸を使用することで強度が増し、プリントものが多いしま模様を織りで表現しています。

 機械織りで作られたしま模様とモダンな色合いの生地を「小倉 縞縞(こくら しましま)」としてブランド化。

 小倉 縞縞のデザインは日本の代表として海外での展示会にも出展され、大変注目を集めました。

 「単なるしま模様の生地ではなく、小倉織の背景や伝統、技術のストーリーを、しっかりと伝えていかなければならないと感じた」と渡部さん。

 現在はバッグやインテリアなども展開しており、今後は国内外で「KOKURA SHIMA SHIMA」の文字を見かけるかもしれません。