本文へ移動

グラフふくおか 2015夏号 summer 通巻579号平成27年6月20日発行(季刊) 発行 福岡県 県民情報広報課

目次に戻る

福岡の、戦後70年

太平洋戦争終結から70年の節目を迎える今年。戦争を二度と繰り返さないためにも、戦争の悲惨さを知り、私たち一人一人が平和への思いを強く持つことが大切です。県内には、さまざまな戦争の爪跡が今も残っています。“福岡県の戦後70年”を振り返り、平和への祈りを捧げてみませんか。

語り継ぐ、大刀洗平和記念館

写真:筑前町立 太刀洗平和記念館大刀洗飛行場に関する貴重な写真や、戦闘機の実機展示のほか、当時の生活の様子がうかがい知れる資料も多数展示

 戦争に関する資料や映像などを常設で展示する施設「筑前町立 大刀洗平和記念館」。平成21年の開館以来、かつて「東洋一」とうたわれた陸軍の航空拠点・大刀洗飛行場があったこの地で、歴史を学び平和の大切さを伝える役割を担っています。また、実際に戦争を体験した“語り部”たちの生の声を通して、当時の記憶を伝える活動にも力を入れています。

写真:筑前町立 太刀洗平和記念館

筑前町立 大刀洗平和記念館
朝倉郡筑前町高田2561-1 電話 0946-23-1227
営業時間 9時から17時 ※入館は16時30分まで
休館日  12月29日から1月3日
料金  大人(大学生以上)500円、高校生400円、小・中学生300円

 語り部の一人、伊藤月路(つきじ)さんは、昭和10年生まれの80歳。実家は、大刀洗飛行場に近い商店街にある理髪店でした。春になると桜並木が見事な通りは、夕方ともなれば多くの兵隊で活気に満ちていたといいます。理髪店も盛況で、伊藤さんは隊員たちから「月ちゃん」と呼ばれ、かわいがられていました。

 戦争末期、特攻隊が編成された頃の話です。ある時、4、5人の隊員がウイスキーやお菓子を手に店を訪れました。「『月ちゃん、明日は片道切符で行くんよ』と言われたものの、その言葉の意味は分かりませんでした。しかし、涙をこらえる兵隊さんと一緒に歌を歌ったことは、70年たった今でも鮮明に覚えています」。

 その後、理髪店は戦争で焼けてしまったそうですが、「父が店の前で撮った家族写真を防空壕から持ち出してくれていました。この写真があるから、戦争を知らない世代の方々に当時のエピソードをお話しすることができます」と伊藤さん。すてきな笑顔を絶やさずに、これからも平和の尊さを訴える活動は続きます。

写真:修学旅行で訪れた学生たちに自ら声を掛ける伊藤さん伊藤さん家族の写真。当時としてはハイカラな理髪店の前で(上)

本誌取材の合間にも、修学旅行で訪れた学生たちに自ら声を掛ける伊藤さん(下)
写真:伊藤さん家族の写真