本文へ移動

グラフふくおか 2014春号 spring 通巻574号平成26年3月20日発行(季刊) 発行 福岡県 県民情報広報課

目次に戻る

官営八幡製鐵所 日本の鋼材生産量の9割を担った近代の遺産
特集 「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」

 明治維新後、産業革命の進展に伴う鉄鋼需要の高まりを受け、明治34年、日本初の銑鋼一貫製鉄所、官営八幡製鐵所が創業。明治43年には国内の鋼材生産量の9割以上をまかなうなど、国の重工業の発展に貢献してきました。

(北九州市) 旧本事務所(きゅうほんじむしょ)
写真:旧本事務所(きゅうほんじむしょ)国の威信をかけた製鐵所の指令塔  製鐵所が創業する2年前の明治32年に竣工した初代本事務所。中央にドームを持つ左右対称の形が印象的な赤れんがの建造物で、長官室や技監室、外国人顧問技師室などが設けられました。大正11年、製鐵所の拡大に伴って新しい本事務所が完成した後は、鉄鋼研究所や検査室などとして利用されました。
(北九州市) 修繕工場(しゅうぜんこうじょう)
写真:修繕工場(しゅうぜんこうじょう)設立から114年今も現役の工場  明治33年、ドイツのグーテホフヌンクスヒュッテ社の設計・鋼材を用いて建設。製鐵所で使用する機械の修繕、部材の製作加工、組み立てなどを行う機械工場群の中心的施設でした。その後、鋼材生産量の増大に伴って3回増築。国内最古級の鉄骨建築物として、110年以上経った現在も修繕工場として稼働しています。
(北九州市) 旧鍛冶工場(きゅうかじこうじょう)
写真:旧鍛冶工場(きゅうかじこうじょう)製鐵所建設に必要な鍛造品を製造  明治33年、修繕工場と同じくドイツのグーテホフヌンクスヒュッテ社の設計・鋼材を用いて建設された鉄骨建造物。製鐵所建設に必要な鍛造品を製造していました。製鐵所の拡張工事により増築されましたが、大正6年に現在地に移築され、製品試験所になりました。現在は、製鐵所の史料室として約4万点の史料を保存しています。
(中間市) 遠賀川水源地ポンプ室(おんががわすいげんちぽんぷしつ)
写真:遠賀川水源地ポンプ室(おんががわすいげんちぽんぷしつ)100年を越え稼働する送水施設  明治39年、鋼材生産量をそれまでの2倍の18万トンとする第一次拡張計画が立案。さらに大量の水が必要になることから、遠賀川から製鐵所まで水を送るための送水施設として明治43年に操業しました。昭和25 年に蒸気ポンプは電動化されましたが、れんが造りの建物は、現在も使用されています。
写真:明治42年頃の東田第一高炉

※上記の4施設は現在も操業中の八幡製鐵所構内にあるため公開は行っていません。  写真提供/新日鐵住金株式会社八幡製鐵所

三池炭鉱 かつて日本一の出炭量を誇った近代化の象徴

 明治政府が急速に進めた近代工業化を支えたのが、かつて日本一の出炭量を誇った三池炭鉱でした。坑口、鉄道、港湾という石炭に関わる歴史的資産が線上につながる三池の地では、貴重な産業景観を見ることができます。

万田坑<国指定重要文化財・史跡>(まんだこう) 写真:万田坑<国指定重要文化財・史跡>(まんだこう)
(熊本県荒尾市、大牟田市)
国内最大規模の主力竪坑  熊本県荒尾市と大牟田市にまたがる万田坑は、宮原坑の南約1.5kmに開削された主力坑の一つ。明治35年から昭和26年まで採掘が行われました。現在は、明治41年に完成した第二竪坑櫓、巻揚機室などが良好な保存状態で残り、石炭の採掘から選炭、運搬の工程が見てとれます。
専用鉄道敷跡<国指定史跡・景観重要建造物>(せんようてつどうじきあと) 写真:専用鉄道敷跡<国指定史跡・景観重要建造物>(せんようてつどうじきあと)
(大牟田市、熊本県荒尾市)
坑口と港を結ぶ石炭運搬専用鉄道
 各坑口から産出した石炭や各坑口で使用する資材、周辺工場の製品などを輸送するために敷設された三池炭鉱専用の鉄道。最盛期には、約150km にも及び、各坑口で働く労働者を運ぶ役割も担っていました。現在、線路のほとんどは撤去されていますが、路床や橋脚などが残ります。
三池港(みいけこう) 写真:三池港(みいけこう)
船渠内の水位を一定に保つために設けられた閘門(大牟田市)
百年後を見据えた大湾岸事業
 三池港は、干満差の激しい有明海に面する三池から、直接石炭を運搬する目的で築かれました。干満に関わらず大型船の接岸を可能にするため考案された国内唯一の閘門(こうもん)を有する船渠(せんきょ)や、ハチドリのように見える形が特徴的です。明治41年に開港し、現在でも貿易港としての重要な役割を担っています。
写真:宮原坑<国指定重要文化財・史跡> (大牟田市) 宮原坑<国指定重要文化財・史跡>(大牟田市)
写真:大正期の三池炭鉱万田坑 大正期の三池炭鉱万田坑
出典:三井三池各事業所写真帖(荒尾市教育委員会所蔵)
現代に受け継がれた先人の技術、物流拠点として発展を続ける港湾

 三池港は、西洋技術を学び、後に三井財閥の総帥となる團琢磨(だんたくま)の主導により、三池の石炭を国内外へ輸出するための積出港として開港しました。三池炭鉱が閉山した平成9年以降は、港湾管理者である福岡県が国内外を結ぶ物流拠点として、三池港の整備、活性化に力を注いでいます。

写真:三池港と釜山港を結ぶ国際コンテナ定期航路 三池港と釜山港を結ぶ国際コンテナ定期航路
写真:現在の三池港 現在の三池港
写真提供:
国土交通省九州地方整備局
博多港湾・空港整備事務所
現在も稼動を続ける三池港
注目したい三池港の役割)
世界に開かれた交易の窓口

 急速な発展を遂げるアジア諸国と地理的に近い三池港は、貿易の拠点としての役割を担っています。平成18年には、三池港と韓国の釜山港を結ぶ国際コンテナ定期航路が就航。釜山港を経由して中国・東南アジア各国に週2便の輸送が行われています。
 また、昨年8月からは新たに中国の上海港につながる上海航路(週1便)の運航を開始しました。釜山航路と併せて、大牟田市はもちろん、有明海沿岸地域における物流拠点として、その活躍が期待されています

三池港からすぐの三池港インターチェンジ
有明海沿岸道路の整備による需要拡大

 三池港、佐賀空港などの広域交通拠点および大牟田市、柳川市、大川市、佐賀県佐賀市、同県鹿島市などの有明海沿岸の都市群とともに、地域間の連携を図る目的で、現在、約55km (計画)の地域高規格道路を整備中です。これにより、スピーディな貨物の受け渡しが可能になり、取扱貨物量の増加が期待されています。

世界遺産登録をめざして 世界遺産登録の流れは?

 先人たちが残した技術と産業遺産。これらの価値を広く知ってもらおうと、これまで関係自治体とともに行ってきた活動により、構成資産に対する保存・保護の意識も高まってきました。
 引き続き、県民の皆さんの応援を励みにしながら、世界遺産登録に向けて取り組んでいきます。

【お問い合わせ】
福岡県世界遺産登録推進室  ☎092-643-3162
ホームページ http://www.kyuyama.jp/

  • 1
  • 今年1月、政府により「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の推薦書がユネスコ世界遺産センターに提出されました。
  • 2
  • 今後(例年夏〜秋頃)ユネスコの諮問機関であるイコモス(国際記念物遺跡会議)が、現地調査を行い、ユネスコに報告します。
  • 3
  • 平成27年夏頃、世界遺産委員会の最終審議を経て、世界遺産登録の可否が決定されます。
  • 4
  • 世界遺産リストに登録