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福岡県情報公開審査会答申第120号

更新日:2015年4月14日更新 印刷

 「○○市町村農産物処理加工施設に係る補助金関係文書に関する公文書の部分開示決定処分に対する異議申立て」の答申内容を公表します。

答申

1 審査会の結論

 福岡県知事(以下「実施機関」という。)が平成18年8月10日18○○第9950号で行った部分開示決定(以下「本件決定」という。)は妥当である。

2 異議申立てに係る対象公文書の開示決定状況

 異議申立てに係る対象公文書(以下「本件公文書」という。)は、平成13年度に小規模零細地域営農確立促進対策事業(国庫補助事業)及び福岡県小規模零細地域農業振興対策事業(県単独事業)として実施された特定事業に関する文書である。

 実施機関は、本件公文書に記載されている情報のうち、別表「非開示情報一覧表」に掲げる情報について、福岡県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条第1項第1号に該当するとして非開示としており、その余の部分は開示している。

3 異議申立ての趣旨及び経過

(1)異議申立ての趣旨

 本件異議申立ての趣旨は、実施機関が行った本件決定の取消しを求めるというものである。

(2)異議申立ての経過

ア 平成18年7月26日付けで、異議申立人は、実施機関に対し、条例第6条第1項の規定に基づき、本件公文書の開示請求を行った。

イ 平成18年8月10日付けで、実施機関は、本件決定を行い、その旨を異議申立人に通知した。

ウ 平成18年9月14日付けで、異議申立人は、本件決定を不服として、実施機関に対して異議申立てを行った。

エ 平成18年9月20日付けで、実施機関は、異議申立書に不備があるとして補正命令を行った。

オ 平成18年9月26日付けで、異議申立人は、異議申立書の補正を行った。

4 異議申立人の主張要旨

 異議申立書における異議申立人の主張を要約すると、次のとおりである。

(1)○○市町村は、個人ではなく、営農組合という団体と委託契約を結び運営しているので、個人情報には該当しない。

(2)公有地(村有地)であるのに何故公開できないのか。

(3)公にすることにより、個人の権利利益を害するおそれがあるためとあるが税金を使い建設した物件を何故公開できないのか。

5 実施機関の説明要旨

 実施機関が本件決定を行った理由を要約すると、次のとおりである。

 用地補償関係公文書について、平成17年10月11日の最高裁判決では、契約相手方が個人の場合でも買収後であれば、不動産登記簿の閲覧により明らかとなることから、被買収者の住所・氏名及び買収地の所在地を開示するよう判決が下されている。

 本件公文書については、平成13年に、すでに事業を完了しており、最高裁判例を用いるならば本件非開示部分については、開示すべき事案と考えられる。

 しかしながら、本事業は同和対策事業として実施しており、地番及び個人名を明らかにすることはもとより、○○市町村には○○の大字しかないため、総受益戸数及び一桁の関係受益戸数が明示されているところから個人が特定されやすいこと、施設を管理する管理主体名を明らかにすれば加入する個人の特定につながるなど、被差別地域の個人を特定することにつながるおそれがあるため、条例第7条第1項第1号に該当すると判断した。

 本県では、悪質な差別事象が後を絶たない同和問題をめぐる現状から、県の責務として、県民の基本的人権の擁護に努めている。 

 同和対策事業に関係する個人を特定できるおそれがある情報を提供することは、いわれのない差別を誘発・助長することにもつながり、個人の権利利益を害するおそれがあるため部分開示としたものである。

6 審査会の判断

(1) 本件公文書の内容について

ア 本件公文書の対象となる同和対策事業

(ア)小規模零細地域営農確立促進対策事業(国庫補助事業)

 小規模零細地域営農確立促進対策事業は、歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域(同和地区)において、小規模零細な農林家の営農体系の確立等を図ることを目的に実施された事業である。

 本件事業は、小規模零細地域営農確立促進対策事業のうち、小規模零細地域農林業近代化施設整備事業に当たり、○○市町村内に農産物処理加工施設を建設するものである。

 本件事業の事業主体は経費を負担する○○市町村であり、建設後の施設の管理主体は、施設を利用し、運営管理を行う農家で組織する営農組合である。

(イ)福岡県小規模零細地域農業振興対策事業(県単独事業)

 小規模零細地域営農確立促進対策事業と同趣旨の事業として、福岡県が県費補助を行っている事業である。

 本件事業は、○○市町村が、農産物処理加工施設の用地取得に関して県費補助を受けたものである。

 国庫補助事業は、施設整備にかかる費用を補助対象としており、用地取得については対象外であるため、県費補助を利用したものである。

イ 本件公文書の性格と非開示情報

 本件公文書は、国及び県の補助事業を受けて実施された、特定事業に関する事業実施計画承認申請書と事業実績報告書である。

 事業実施計画承認申請書は、補助事業の承認を受けるための申請書であり、事業の概要、計画、費用が記載されている。

 事業実績報告書は、事業完了後に事業経費、効果等を報告するためのものである。

 実施機関は、別表「非開示情報一覧表」にある情報を、条例第7条第1項第1号に該当するとして非開示としている。

 なお、本件公文書には、○○市町村が申請した他の事業も記載されているため、開示請求者が請求対象としていない農道、かんがい排水、堆肥製造施設に関する補助事業に係る情報(地区名、施行箇所名、営農組合名)も非開示とされている。

(2)条例第7条第1項第1号該当性について

ア 条例第7条第1項第1号本文該当性について

 条例第7条第1項第1号は、特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある場合に非開示とすることを定めている。

 個人を識別できる情報とは、当該情報の本人である特定個人が誰であるかを直接識別できる情報だけではなく、一般人が通常入手し得る情報と照合することで、間接的に特定個人に結びつく情報を含んでいる。

 このため、当該情報の本人である特定個人と関係を持つ近隣者であれば知り得る情報や、一般人が特別な調査をすることで知り得る情報は、個人を識別できる情報には含まれないが、個人の権利利益を害するおそれがある場合は、非開示とすると解されている。

 当審査会が、県の同和対策事業所管課に確認したところ、県では同和地区の正確な範囲を把握していないとした上で、市町村内の相当部分が同和地区である場合もあると聞いており、大字名などは、同和地区と結びつく情報と認識しているとのことであった。

 同和問題は、現在、未解決な状況にあり、同和地区に結びつく情報の公開が、新たな社会的差別を引き起こすおそれを否定できない。

 したがって、同和地区に結びつく情報は個人の権利利益を害する情報であると認められる。

 このことを踏まえ、各項目別に見ていくこととする。

(ア)「地区名」

 地区名とは、同和地区名のことである。

 同和地区は、特定個人の住所地を示す情報ではなく、特定個人を識別できる情報とは認められない。

 しかし、同和地区名であることから、これを開示した場合には、当該地区関係者の権利利益を害するおそれが認められる。

(イ)「施行箇所名」

 施行箇所名は、施設設置箇所を示す情報であり、地番までの記載があれば特定個人を識別できる情報であるが、本件事案においては、大字名までの記載しかされておらず、特定個人を識別できる情報とは認められない。

 しかし、当該情報は同和地区の特定に結びつく情報と判断され、個人の権利利益を害するおそれが認められる。

(ウ)「営農組合の名称」

 実施機関は、施設を管理する管理主体名を明らかにすれば加入する個人の特定につながるとしているが、組合の名称が開示されても加入者である個人の特定につながるものではなく、特定個人を識別できる情報とは認められない。

 しかし、当該名称を知った者が、組合員の過半数が同和地区関係者であることを理由に、不当な差別行為を行うおそれを否定できず、同和地区の特定に結びつく情報であることから、個人の権利利益を害するおそれが認められる。

 なお、異議申立人は、運営は○○市町村が営農組合と委託契約を結び行っていることから、個人情報に当たらないとしているが、条例は非開示情報として、個人を識別できる情報のほか、個人の権利利益を害するおそれがある情報を掲げているところ、当審査会は、当該情報は団体に関する情報であるとともに、個人の権利利益を害するおそれがある情報に当たるものと判断するところである。

(エ)「土地所在地」

 土地所在地は、施設の設置箇所を示す情報として、地番まで記載されたものである。

 当該情報は、不動産登記簿と照合することで、土地譲渡人である特定個人を識別できる情報である。

(オ)「土地譲渡人の氏名、印影、住所」

 土地譲渡人の氏名、印影、住所は、土地譲渡人である特定個人を識別できる情報である。

イ 条例第7条第1項第1号ただし書イ該当性について

 条例では、第7条第1項第1号本文に該当する場合であっても、ただし書で掲げる情報は例外的に開示することが規定されている。

 先に個人情報本文に該当するとした情報は、ただし書ロ、ハ及びニに当たらないことは明らかである。

 よって、ただし書イ該当性について判断することとする。

 ただし書イは、法令及び条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報を例外的に開示することとしたものである。

 以下、各項目別に判断することとする。

(ア)「地区名」

 同和地区名は公表されたものではない。

 また、これが明示されることで、差別行為の発生のおそれを否定しえないことから、法令等で公にされ、又は公にすることが予定されている情報であるとは認められない。

(イ)「施行箇所名」

 実施機関は、平成17年10月11日最高裁判決の基準に従えば、「施行箇所名」及び「土地譲渡人の氏名、住所」は公にすべき情報とも考えられるが、本件は上記最高裁判決とは事案を異にし、被差別地域の個人を特定することにつながるおそれがあることから非開示としている。

 当該判決は、一般の公用地取得に当たって、所有権移転登記が済めば、何人であっても、当該地の土地登記簿を閲覧することで、土地譲渡人である旧所有者の住所・氏名、譲渡した土地の所在・地番等を知り得ることから、当該情報は既に公にされた情報として公開すべきというものである。

 しかしながら、本件事案では、上記最高裁判決の事案とは異なる事情、すなわち、同和対策事業として実施されたことを踏まえ、検討する必要がある。

 なぜなら、実施機関は当初決定で当該事業が同和対策事業であることを明示しており、これに加えて、施設施行箇所、土地所在地といった情報を公開することは、当該情報が同和地区と関係しているという情報を公にすることにつながるからである。

 当審査会が○○市町村に確認したところ、当該農産物処理加工施設は工事現場において、工事名を掲示していたが、事業名までは掲示しておらず、同和対策事業との関係までが明らかになっていたとはいえない。

 また、○○市町村は議会に対して提出した当該施設建設に係る予算資料に図面や施設概要といった施設設置箇所を示す資料を添付していたが、一般の閲覧には供していないとしている。

 したがって、「施行箇所名」は法令等で公にされ、又は公にすることが予定されている情報であるとは認められない。

(ウ)「営農組合の名称」

 営農組合が施設の管理主体であることは公にされておらず、法令等で公にされ、又は公にすることが予定されている情報とは認められない。

(エ)「土地所在地」

 「施行箇所名」と同様に、法令等で公にされ、又は公にすることが予定されている情報であるとは認められない。

(オ)「土地譲渡人の氏名、印影、住所」

 土地譲渡人の印影は、法令等で公にされ、又は公にすることが予定されている情報とは認められない。

 つぎに、土地譲渡人の氏名、住所は、施設の施行箇所の所在地を知る者であれば、不動産登記簿を閲覧することで知り得る情報である。

 しかし、同和対策事業であることから、施設施行箇所を非公開とした本件事案においては、法令等で公にされ、又は公にすることが予定されている情報とは認められない。

ウ 条例第7条第1項第4号該当性について

 本件決定で非開示とされた情報は、条例第7条第1項第1号に該当することから、重ねて、他号該当性の判断を要するものではないが、当該情報を公開することは、県が同和問題の早期解決に向け、同和・人権施策を推進していく上での著しい支障が生じるおそれがあることから、条例第7条第1項第4号にも該当すると解される。

エ 異議申立人のその他の主張について

 異議申立人は、本件施設の建設に関連する種々の主張をしているところであるが、当審査会は、条例上実施機関が行う開示決定等について非開示条項適用の妥当性を判断するものであり、当該主張は当審査会の判断を左右するものではない。

 以上の理由により、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

別表

非開示一覧表

非開示情報一覧表
非開示箇所説明
地区名
「A他2地区」
 補助事業で建設する施設の受益対象となる同和地区である。
施行箇所名
「大字B」
 農産物処理加工施設の設置場所である。
 施設受益者の過半数が同和地区内の農家であることが要件であるが、同和地区内に設置することは必ずしも必要ではない。
営農組合の名称
「C生産営農組合」
(C=同和地区名)
 実際に施設を利用し、管理運営する受益農家で組織された組合である。(当該事業の管理主体)
 本件事案では、大字名、地区名を冠する組合名称となっているが、地区名等を冠することが要件ではない。
土地所在地
「○○市町村大字B☆☆番地」
 土地譲渡人が施設を設置するために提供した土地の所在地である。
 大字以下地番まで記載されている。
土地譲渡人の
氏名・印影・住所
 土地譲渡人の氏名、印影及び住所である。
 大字以下地番まで記載されている。

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