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平成24年度奨学生レポート

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年10月1日更新

2015年春

山川 詠太郎

米国ペンシルベニア州立大学 

 

大学生活後半戦の1年目の三年生もあっというまにおわってしまい、あと1年というところまでくると、もうすぐ卒業という嬉しい気持ちと、大人になってしまうことへの恐怖でなんだか複雑な気持ちです。

 さて、学部での本格的な勉強が始まった三年生の総締めとなる春学期ですが、学業面ではまたしても厳しい1学期となりました。授業内容としては、一つを除いてすべてが学科の必修授業で、そのどれもが難しいものでした。その授業の内訳は、流体力学、制御、実験、航空工学、そして選択授業だったパンクロック史の5つです。成績のほうですが、必修ではなかったパンクロック史以外はまたしてもぎりぎりの成績と言わざるをえないものでした。

 まず必修の授業ですが、制御と流体の授業は前学期からの引き続きでした。流体の授業では、特に音速以上での空気が流れる性質などをまなびました。制御の授業でも前学期と同じように、宇宙空間での衛星やロケットなどがどうごくかというのを、プログラミングなどを使って学びました。内容としては前学期からあまり変更がないのですが、この学期からグループワークが増え、特に自分でグループを選べなかったので、知らない人と様々な課題をこなしていくのは、最初はなかなか苦労しました。この二つは前学期から継続ということで比較的らくだったのですが、それでも胸を張れるような成績はとれなかったのは、残りの二つの授業にかなりの時間と労力をさいていたからです。

 まず、実験の授業ですが、構造と流体の2パートがあり、どちらかのパートを先に行い、学期の半分で切り替わるというものでした。実験のグループはランダムで決められたのですが、そのうちの一人がもともと仲の良い友達であったことと、他のグループメンバーも優秀で協力的な人ばかりだったのでたすかりました。僕たちのグループは構造から始めたのですが、この構造の実験というのがとても地味で退屈なものでした。センサーのついた鉄の棒に重りをひたすらつけて曲がる具合をはかったり、火薬を抜いたミサイルを叩いて振動するのを計測したりと、僕が考えていた航空工学の実験とははるかにかけはなれた、地味なものでした。これだけ聞くとこの授業はそんなに大変ではないように思えますが、大変なのは授業のあとのレポートで、これに週のほとんどの時間を割いていたような気がします。まず、実験で入手したデータの量が膨大で、これをレポートに使える形にエクセルなどを駆使してまとめていくのはかなり骨の折れる作業でした。レポート自体にも、書かなければならない内容が詳細に決まっており、書き終わると10ページを超える量になっていることも当たり前でした。学期の後半に始まる流体パートでも基本的にはやることは一緒でしたが、実験自体が構造に比べて少し華やかになったのがせめてもの救いでした。風洞とよばれる大きなトンネルの中に翼などの縮小版を置き、トンネル内に風を流して、翼の周りの空気の流れを観察するというものでした。実際、実験中は機械が勝手にデータを取るのでかなり暇なのですが、これこそまさに僕がイメージしていた航空工学の実験だったので構造パートに比べてもかなり楽しかったです。ただ、レポートの大変さは変わらずだったので、毎週涙目になりながら仕上げていました。この授業は難易度そのものよりも時間をかなり取られることが大変でした。

 もう一つ今学期大変だった授業は、航空工学の授業です。これは飛行機がなぜ飛ぶのかということや、飛行機が飛んでいるときに各部でどういうことがおこっているのかということを学ぶ授業でした。授業の内容自体は、今までただの数式として学んできたものの意味がやっとわかったりと、すごく興味深いものだったのですが、授業を教える先生がかなりの名物先生で、学部でも単位をもらうのが一番難しい授業として有名で、実際かなりの数の4年生が再履修しているほどでした。授業スタイルがかなり特殊で、スピードも速い上に先生がほとんど板書をしないのでしっかり集中していないとすぐに話がわからなくなってしまうのですごく大変でした。その上、毎週小テストがあるのですが、その内容も先生の気まぐれでかわるので、毎回悲惨な点数をとってしまいました。その中でも、なんとかまわりに助けてもらいながらギリギリではありますが、単位を取得することができて本当によかったです。

 もうひとつ、選択授業として履修していたのは、パンクロック史という授業でした。これは読んで字のごとく、パンクロックの歴史を紐解くという授業でした。もともとパンクロックという音楽は好きでしたし、なにより授業がオンラインベースで毎週のクラスがなかったので履修しました。パンクロックと聞くとセックスピストルズなどが有名ですが、実際にはそれより以前にあまり日の目を見ることがなかった様々なパンクバンドがいて、そのバンド達も他のジャンルの様々な有名なバンドから影響をうけていたということや、様々な有名なパンクの曲が作られた背景にどのような社会的な事件があったのかなど、今まで知らなかったことを学べてすごく興味深かったです。簡単なクラスだからと取ってはみたものの、そういった歴史的なものや今まで知らなかった様々なバンドを知ることができたのですごく面白い授業でした。

 課外活動ですが、今学期は忙しい忙しいと言ってばかりいてサボっていました。前学期参加した、学生フォーミュラの方もなかなか時間を見つけることができずにほとんど顔を出せませんでしたし、その他の課外活動も参加するチャンスがあったにもかかわらずやはりなにかと理由をつけて参加しませんでした。今覚えばかなりの時間はあったし、その辺の時間のマネージメントをもっとうまくできていれば様々なことができていたのに、と反省しています。

 秋学期とはうってかわって、学校全体が雪に埋もれることもあり、アメフトなどのイベントが少なくほとんど勉強していたように思います。

 あと1年で卒業ということで月日の流れる速さにびっくりしていますが、最後一年しっかりと気を抜かずに予定通り卒業できるように頑張りたいです。卒業後の進路についてもまだ不透明なままなので、その点についてもしっかりと考えて決めていきたいと思います。

2015年秋

藤野 希望

米国ハワイ大学マノア校

 

    今学期は、初めて寮ではなく、家を借りて3人でシェアハウスをしました。大家さんがとてもいい方で、感謝祭の時はホームパーティーに招いて下さったり、 オアフ島を1周するショートトリップに連れていって下さったりしました。また、私が自炊している日本食を教えて欲しいと言って下さり、大家さんと、大家さんの友人を家に招いて何度かちょっとした日本食の料理教室もしました。中国出身の大家さんには、本場の中華料理を教えて頂き、好きな料理を通して異文化交流ができました。

 また、友人に誘われ、初めての茶道にも挑戦しました。まさか、アメリカで茶道を習うとは思ってもみませんでしたが、だからこそ、和のおもてなしの心や、侘び寂びの精神を一層感じ、学ぶことができたと思います。

 

 渡米してからの3年半を振り返ると、決して楽なことばかりではありませんでしたが、様々なひと、もの、価値観に触れ、刺激的で本当に恵まれた大学生活だったと思います。そのなかで、新しい自分の強みや弱みを発見し、それを活かせる将来の目標を得ることができました。 これから留学を考えている人は、常にアンテナを張って、色々な事に挑戦して、全力で取り組んでみてほしいです。明確な目標があるのが一番望ましいですが、なかったとしても必ず得るものはありますし、それが将来の目標や成長に繋がると思います。始めは戸惑うことや、困難なことも沢山あるかと思いますが、そんな時は、周りに助けを求めて下さい。そうすれば、必ず誰かが力を貸して、応援してくれます。また、その気持ちに感謝して、一生懸命応えることで、周りとの良い関係も築けるはずです。私自身、日々周りに支えられていましたし、留学で得た経験と出逢いが何よりもの財産です。

 

 

 最後になりましたが、大学留学という自分を大きく成長させるチャンスを与えて下さり本当にありがとうございました。「日本と海外の架け橋になりたい」という漠然とした目標だけを持って渡米しましたが、留学生活を通して、自分を成長させ、自分を見つめ直し、明確な目標を得ることができました。今後は、 今まで支えてくれた人々に恩返しができるよう、社会に貢献していきたいです。

 

 


山川 詠太郎

米国ペンシルベニア州立大学 

 

 

 気づけば大学生活最後の年となっており、月日の流れる速さに驚いています。学生という身分で居られるのもあと数ヶ月しかないと思うと、社会に出ることに対するワクワクする気持ちと同時に、このモラトリアムが終わってしまうことへの寂しさと不安を感じております。

 さて、勉学の方ですが、最終学年ということもあり、日本で言うところのいわゆる卒業制作にあたる、シニアプロジェクトと呼ばれるものにほとんどの時間を費やした一学期でした。

 私が通う航空宇宙工学部では、4年生で航空機、宇宙機、ヘリコプターの三つのコースから1つを選択することになります。もともと流体力学に興味があった私は、その中でも一番流体の知識が使えそうな航空機コースを選択しました。

 航空機コースの中でもさらに選べるプロジェクトが3つあり、ボーイング757型に変わる飛行機を設計するプロジェクト、小型のアクロバット用の飛行機を設計するプロジェクト、そしてDEPと呼ばれる推進システムを搭載した19人乗りの小型商用飛行機を設計するプロジェクトの中から選ぶというものでした。

私が選んだのは、19人乗りの小型商用飛行機の設計プロジェクトで、これはNASAが主催になって行っている学生コンペでもありました。 DEPはDistributed Electric Propulsionの略で、NASAが主体となって研究しているハイブリットの推進システムです。具体的には、推進力自体は電気モーターについたプロペラから生み出されるのですが、そのモーターのための発電を通常のジェットエンジンで行うことによって、従来のプラペラ機よりも静かでより良い燃費で飛ぶことのできる飛行機です。

 このプロジェクトには6人のランダムに選ばれたチームで取り組みました。今までのプロジェクトは自分でメンバーを選ぶことができることが多かったので、気の知れた友人と取り組むことができたのですが、今回はランダムに選ばれたということで、初対面のメンバーと取り組まなければいけないのはなかなかに大変でした。プロジェクト自体もかなり難しいものなのに、まずは人間関係を構築しなければいけないのは、お互いに気を使うものでしたが、かなりの時間を一緒に過ごしたので学期の終盤には一緒に飲みに出かけるくらいまで親しい関係になることができました。

 プロジェクトでは、今までの授業で習った様々な公式や知識を利用し、翼の位置や大きさ、翼断面の形などの飛行機の様々な諸元を設計していきました。中でも私たちのプロジェクトは、まだ現実に存在しないDEPという推進システムを使うこともあり、燃料重量やエンジン周りの設計に関してはかなり苦労しました。

 私が通う大学では、エンジニアにとって一番大切なスキルはコミュニケーション能力だと一年生の頃から教えられました。エンジニアというのはチームで働くものであるからという考え方からです。そのため一年生の頃から数多くのグループワークを課されるのですが、このシニアプロジェクトはある意味その集大成というべきものかもしれません。逆に言えば、今までの様々なグループプロジェクトで練習したおかげで問題なく取り組むことができました。最初の頃は英語もそこまで得意ではなかったので、かなり嫌々取り組んでいたグループプロジェクトでしたが、四年目になった今思えば逆にありがたいものでした。

 今学期は就活の様々な準備などで行けないミーティングも数多くあり、チームメイトにはその点で少し迷惑をかけてしまったかと思います。来期も引き続きこのシニアプロジェクトはあり、時間的にも余裕があると思うのでもっと密にコミュニケーションをとって取り組みたいと思っています。

山川さんと現地の友人の写真


山野 善紀

英国 リーズ大学

 

 今学期最大の事件は卒論を諦めざるを得なくなったことである。前年度は卒論に専念したいという思いで難関必修科目である政治・経済系授業を選択し、卒業論文をモチベーションの源にしていた矢先、精神的に深刻な痛手を負ってしまった。今学期をなんとか切り抜けられたのは、中国留学中に中国語読解力を十分に高めていたからだろう。貴重な中国旅行の機会を犠牲にして図書館に通ったことは賢い判断ではなかったが、成果はあった。

 

 クリスマス休暇を迎える頃には精神状態がかなり悪化し、初めて病院を受診した。中度の鬱と診断された。後から思い返せば前年度の同時期ごろから既に兆候はあり、早期に対処すべき問題だったのだが、あくまで自力での回復にこだわり、抱え込んで悪化させてしまった。不幸中の幸いは、留学生等ストレスの高い学生を多く抱えるリーズ大学には、学生の心の健康問題に理解があったことだろう。また、イギリスの保険制度(NHS)は総合診療医(General Practitioner, 略称GP)制度をとっており、ありとあらゆる健康相談(一次医療)を一つの窓口から申請することができる。日本のような専門医にかかる敷居の高さ、病院選びの難しさはない。反面救急以外では予約から診察まで数日ほど時間がかかるので、早めに予約する必要がある。カウンセラーに話すだけでもかなり気持ちは違ってくる。自分の精神状態に異常を感じたら、私の二の轍を踏まないためにも、恥ずかしがらず、深刻化する前に診療を受けて欲しい。これはアドバイスではなく、手ひどい失敗をした私からのお願いだ。これを読んで下さる皆さんには同じ経験をして欲しくない。

 

 各教科ごとに見れば質の低い授業はなかったが、必修・選択必修科目が語学に偏り気味なため、全体としては『語学のための語学』という印象を受けた。中には語学そのものが好きな学生もいるのかもしれないが、多くの学生はむしろ語学を通じて何か別のことをすることを目指している。私の場合、歴史・文化・文物が主な関心の対象であり、中国語は目的ではなく手段ととらえていたが、学年が上がるごとに語学系の比重が上がり、非語学系も政経分野が大半を占めるようになるのが息苦しかった。中国留学からイギリスへ帰国直後の私の中国語力は、イギリス留学開始時の英語力と大差ないものであったと自負している。だが、その後の進歩には極めて大きな差が出た。その差は、英語『で』学んだか中国語『を』学んだかの違いに帰結すると思う。

 近年日本の大学が相次いで外国人留学生を対象に英語授業を始めたという話を聞く。しかし、中国・イギリス留学の経験を振り返ってみると、この動きには聊か懐疑的にならざるをえない。そもそも日本への留学生の大半を占めるアジア系留学生にとっては英語も日本語も等しく外国語だ。それどころか漢字圏からの留学生にとって日本語は英語以上に習得が容易な言語と言える。そうなると英語授業の対象になるのはアジア圏外からの学生になるが、英語圏の並み居る名門大学を捨ててはるか日本にまで留学してくる学生が、英語で指導を受けられることをそこまで重要視するだろうか?彼らが日本の大学を選ぶ理由は対象分野における研究レベルの高さであるはずだ。ならば、各分野で最先端を走り世界をけん引する日本最高の頭脳が英語授業のために時間と労力を奪われることこそがより本質的な損失ではないかと思う。

 また、本科生ではなく語学目的の短期留学生を対象に英語授業が計画されているのであれば、それは根本的に本末転倒だ。語学力を磨きに来ている学生に英語で授業をするのは、彼らの語学力が飛躍的に上達する機会を奪う行為以外の何物でもない。実践を通して語学学習の成果を享受し、自己の課題を明確化し、実感が伴うものとするには、必要不可欠の手段として言語を運用するに勝ることはない。日本語での授業はその絶好の機会である。この場を借りて一語学学習者として切実な想いで提案させてもらう。中級以上の語学留学生は、現地の一年生と同じ学科授業を受け、テストのみ特別に用意し、適宜英語回答を許可されるようにすべきだ。中国語を学ぶ過程で、学科授業の不足は痛烈な不満を感じた点だった。イギリスの留学準備コースのように、その言語『で』学ぶ機会は語学学習者にとって代えがたいものなのだ。

 

 もし、日本の大学で英語の授業を実施するならば、それを本当に必要としているのは外国人留学生ではなく、むしろ日本人学生の方だと思う。現在の最先端を担う研究者に英語の負担を強いるより、未来の最先端を担う研究教育者の英語能力こそを育むべきだ。英語でしか授業を受けられない外国人学生を受け入れるメリットよりも、英語で授業が受けられ、英語で研究成果を発信できる日本人を増やすことの方が将来的に有益ではないだろうか。その世代が教える立場になるころには、英語での授業も過剰な負担でなくなるだろう。

2016年春

山野 善紀

英国 リーズ大学

 

 今回は最後のレポートなので、いつもより長くなる。だから、どうしても伝えておきたいメッセージで始めたい。

 

夢は叶えれば現実に変わる。

そして現実はいつも厳しい。

だから、夢を叶えるのは一番大切なことではない。

厳しい現実に負けないために、夢を持ち続けることこそが一番大切なことなのだ。

 

 このレポートの主な読者は大学留学を考えている高校生かと思う。そして、これから留学を考えている人たちの大半にとって、おそらく目下最大の懸案は語学ではないだろうか?五年間日本を離れて過ごしてみて、確実に言えることがある。語学力より遥かに重要なのは伝えるべき内容を持っていることだ。いかに高度な語学力を持っていても、伝えるべき内容がなければ一言も喋ることはできない。たとえるならば、どんな高性能のスーパーカーも運転手がいなければ車庫から出ることすらできないのと同じことだ。その反対に、自転車で世界一周してしまう人がいるように、伝えなければならないことがあれば、ギリギリの語学力でもなんとかできる。素晴らしい語学力があるのに授業では全く発言できない人も、強い訛りや文法の誤りがあっても鋭い指摘を繰り返す人も、実際にたくさん見てきた。

 

 伝えるべき内容を得るためにも、出願要件を満たしたなら、英語の勉強は適度な語彙力強化程度にとどめて、専攻分野の勉強に力を入れることをお勧めする。不安は分かるが、実際のところ現地での語学力の上達スピードを考慮すると日本で必要以上に無理をするメリットは薄い。特に留学準備コースが事実上必須となるイギリス留学の場合はその傾向はより顕著になるだろう。

 

 専攻分野の知識と英語力を同時に高めたいなら、英語論文を留学前から読み始めることをおすすめする。論文というと敷居が高く感じられるかもしれないが、いざやってみると意外なほどに読みやすい。なぜなら論文は決まった形式で、論理的に、明確な目的をもって、簡潔に書かれていて、そのうえ自分の専攻分野なら日本語で得た予備知識を動員することができるからだ。一見とっつきやすそうに思える新聞や雑誌は、形式通りに書いてはつまらないので変則的なレトリックを使って書かれることが多く、話題も多岐に渡る。また、教科書はその性質上網羅的で大ボリュームにならざるをえないので、テーマも絞らずに丸一冊読み通すには相当の根気が求められることになる。たしかに、論文を完全に理解して読みこなすのはきわめて難しい。だが、「ただ読むだけ」ならば、専門用語以外に難しい要素は少ない。その専門用語も「いずれ学ぶ、確実に役に立つ用語」である。何より、日本を離れてまで学びたい分野の話題なら、モチベーションが全く違う。私の中国語での経験を挙げると、新聞読解すらおぼつかない段階でも、歴史系の論文はまずまず読めていた。それほどまでにモチベーションと、予備知識の有無は大きいのだ。

 

 英語論文はGoogle Scholar、Jstor、Project Muse等で調べることができ、無償で公開されているものも少なくない。自分が調べたいキーワードが分からないならWikipediaの『別の言語で見る』機能を活用すると良い。通常の辞書では出てこない専門的な用語も見つかり、役に立つ。教科書ならOxford Very Short Introductionシリーズはコンパクトなので手に取りやすいだろう。また、正式な論文や学術書には必ず参考文献のリストが付く。一つ気に入った論文があれば参考文献をはしごすることでその分野への理解を深めるきっかけになる。

 

 英語力にそこまで不安がなければ、いっそのこと日本語でより効率的に、より大量に学んでおくのも一つの選択だ。知識量がもたらすアドバンテージはもちろんのこと、英語圏外での学問的理解に馴染みがあることは、それ自体が希少価値であり、参加型授業での発言の機会と、貢献力を増すことになる。当たり前のことだが、日本を出れば日本語が外国語なのだ。

 

 英語力の強化、特に語彙力の増強が必要になるのは、留学前よりもむしろ留学中期以降だと感じた。大量のリーディングが要求される文科系学部では、未知の単語を逐一辞書で調べていては到底間に合わない。そのため、論旨をつかむのに支障がない範囲で類推しながら読むことになる。類推力の向上に伴い留学後しばらくは読解速度は飛躍的に伸びる。しかし、類推で補いながらの読解では語彙力は増えにくい。いずれ読解速度の壁に達する。これを打開するには意識的な語彙力の向上が必要なのだ。

 

 最後に、留学してからの生活について、反省点を一つだけ付け足しておく。私は留学前半にほとんど旅行しなかったが、これはひどい間違いだった。勉強以外の経験をすること、つまり遊ぶことは自由でも選択でもない。義務である。勉強だけしていればいいという考えは実は怠慢である。留学して勉強するのは当然の前提条件でしかない。海外にいることを活かすために勉強以外の時間を捻出するのが本当の意味で真面目な生活といえる。また、趣味や遊びの時間を捻出するために効率よく、短時間に集中して勉強する、という技術は、留学後半でより高度な成果が要求されるようになってきたときに余裕を生む。一年生の段階から使える時間全てを勉強にあててしまうと、それ以上忙しくなったときに時間当たりの生産性で不利になるのだ。留学生活で得られるものを最大化するために大いに遊んで欲しい。

 五年間の留学を通して、当たり前に思っていたことや、漠然と抱いていたイメージが次々に崩れていった。留学を終えた自分が留学前の想像とは全く違うものだったのも当然のことかもしれない。

 

 厳しい現実に負けないために、夢を持ち続けなければならないと書いた。だが、人は往々にして過去にそれを求めてしまう。夢を過去に求めるのは間違いだ。夢は未来に求めるべきものである。叶えられなかった夢や叶うことで消費されてしまった夢は過去に碇を下ろし、時に未来への健全な歩みを阻害する。戻らぬ過去の再現に憑りつかれたとき、人は間違いを犯す。希望は未来に見出さなければならない。

 

 留学中にはさまざまなことが起こる。全てが順調にいく時期もあれば、やることなすこと裏目裏目の時期もある。そんなときでも前に進み続けるためには、順調だった過去を取り戻そうとするのではなく、未来に夢を描かなければならない。

 

 この留学の機会を与えて下さったアンビシャス奨学金へ心から感謝します。4年間、本当にありがとうございました。

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